- ストーリー
- 2024/12/25
バレエ「眠れる森の美女」はなんとなく知っているけど、作品について詳しく知りたいな・・・。
と悩んでいませんか?
そんなバレエをもっと知りたい方に向けて、バレエ「眠れる森の美女」について詳しくなれる記事を書きました!
- バレエ「眠れる森の美女」のあらすじ・登場人物について知りたい方
- 発表会・コンクールで「眠れる森の美女」の作品を踊る方
- 作品の背景を学んで、踊りに取り入れたい方
この記事では、バレエ「眠れる森の美女」の登場人物・あらすじ・特徴を紹介していきます。
ロシアのバレエ学校に留学中、バレエ史を学んでいた私がこの記事を書いています。
「眠れる森の美女」のマメ知識などに加えて、後半では作品の練習に使えるCDやDVDも合わせて紹介してるので、ぜひ最後まで読んでくださいね!
チャイコフスキーの三大バレエの一つ「眠れる森の美女」とは
バレエ「眠れる森の美女」の原作は、フランスの詩人シャルル・ペローによって書かれた童話集の中のひとつ「眠れる森の美女」です。
音楽は、有名なロシアの作曲家ピョートル・チャイコフスキーによって作曲されました。
チャイコフスキーによって作曲されたバレエ作品「眠れる森の美女」「白鳥の湖」「くるみ割り人形」は「3大バレエ」と呼ばれています。
「3大バレエ」の中で2番目に制作されたのが「眠れる森の美女」です !
- 原作:シャルル・ペロー著「童話『眠れる森の美女』」
- 作曲:ピョートル・チャイコフスキー(1840−1893年)
- 振付:マリウス・プティパ(1818−1910年)
- 構成:プロローグ付き全3幕4場
- 初演:1890年(マリインスキー劇場)
振付は、マリインスキー劇場のバレエマスターであったマリウス・プティパです。
実はチャイコフスキー作曲の「眠れる森の美女」が制作される前にも、パリ・オペラ座で同じペローの童話を原作にした作品が2回作られました。
初演は1890年1月15日、ロシアのマリインスキー劇場で行われます。
「眠れる森の美女」の制作には舞台美術や衣装に多くの制作費を費やし、当時のロシアの豪華絢爛さをアピールしようとした大規模な国家プロジェクトでした。
「眠れる森の美女」の制作には、劇場の年間予算の4分の1が費やされました。
そのためか、初演時の上演時間は4時間半と非常に長くなりました。
初演時の評判はあまり良くなかったが、公演を重ねるごとに人気が高まっていった作品です。
バレエ「眠れる森の美女」の登場人物
バレエ「眠れる森の美女」に登場する人物たちをまとめました。
主な登場人物
まずは、作品の中で重要な役割をする登場人物たちです。
- オーロラ姫:フロレスタン国王夫婦の娘
- デジレ王子:オーロラ姫と結婚する隣国の王子
- フロレスタン14世:オーロラの父、国王
- 王妃:オーロラの母
- カラボス:悪の妖精
- リラの精:一番偉い善の妖精
※英国ロイヤル・バレエ団では、王子は「フロムリトン王子」という名前になっています。
オーロラ姫、デジレ王子、リラの精が中心となり、ストリートが進んでいきます。
ちなみにフロレスタン14世国王の名前は、バレエの創始者とされている「ルイ14世」の名前にちなんで付けられました。
悪の妖精カラボスは女性ですが、バレエ団によっては男性が役を演じる場合もあります。
その他の登場人物たち
「眠れる森の美女」には、ほかにも多くの登場人物たちがいます。
- カンタルビュット:式典長
- ガリフロン:デジレ王子の家庭教師
- 6人の妖精たち(優美の精、無邪気さの精、食べ物の精、呑気の精、激しさの精)
※リラの精を除く
- 花婿候補の4人の王子
- 村の若者たち
- 子供たち
- 召使いたち
- 貴婦人たち
第3幕のオーロラ姫の結婚式の場面では、以下の人物たちも登場します。
- 金の精、銀の精、ダイヤモンドの精、サファイアの精
- 青い鳥とフロリナ王女
- 赤ずきんと狼
- シンデレラ姫とフォーチュン王子
- 親指小僧とその兄弟達と人食い鬼
- 長靴をはいた猫と白猫
第3幕に登場する人物の多くは、童話「眠れる森の美女」の著者シャルル・ペローが書いた他のお話に登場する主人公です。
配役ごとの出演か所まとめ
バレエ「眠れる森の美女」に登場する人物の出演か所を表にまとめました。
役名 | プロローグ | 第1幕 | 第2幕 | 第3幕 |
---|---|---|---|---|
オーロラ姫 | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ |
デジレ王子 | ◯ | ◯ | ||
フロレスタン14世 | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ |
王妃 | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ |
カラボス | ◯ | ◯ | ◯ | |
リラの精 | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ |
カンタルビュット | ◯ | ◯ | ||
ガリフロン | ◯ | |||
優美の精、無邪気さの精、食べ物の精、呑気の精、激しさの精 | ◯ | |||
花婿候補の4人の王子 | ◯ | |||
金の精、銀の精、ダイヤモンドの精、サファイアの精 | ◯ | |||
青い鳥とフロリナ王女 | ◯ | |||
赤ずきんと狼 | ◯ | |||
シンデレラ姫とフォーチュン王子 | ◯ | |||
親指小僧とその兄弟達と人食い鬼 | ◯ | |||
長靴をはいた猫と白猫 | ◯ | |||
村の若者たち | ◯ | |||
子供たち | ◯ | |||
召使いたち | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ |
貴婦人たち | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ |
妖精たち | ◯ | ◯ | ||
カラボスの手下たち | ◯ | ◯ |
マリインスキー劇場の動画を参考に表を作成しました。
バレエ団によって、出演か所は異なるので参考に程度に見てください!
バレエ「眠れる森の美女」のあらすじ
バレエ「眠れる森の美女」のあらすじをシーンごとに紹介します。
プロローグ:オーロラ姫の誕生
国王フロレスタン14世と王妃の間に、オーロラ姫が誕生しました。
彼女の誕生を祝う国をあげた盛大な洗礼式には、多くの人が招かれました。
6人の妖精たちも招かれ、オーロラ姫が幸せに美しく成長するようにそれぞれ願いを込めた魔法をかけていきます。
最後に妖精の長リラが魔法をかけようとした時、悪の妖精カラボスが現れます。
自分が招待されなかったことに腹を立てたカラボスは、オーロラ姫に「20歳(16歳)の誕生日に紡錘(つむ)の針にさされて死ぬだろう」と不吉な呪いをかけ、その場を去っていきました。
人々がオーロラ姫を心配する中、リラの精が王様にこう伝えました。
「呪いを解くことはできませんが、弱めることはできます。もし紡錘の針にさされたとしても100年間眠るだけで死ぬことはありません。その100年が明ける頃、運命の人とのキスで目を覚まし、その人結ばれることでしょう。」
国王は、国中の紡錘を集めて燃やすよう命令し、紡錘の使用をすべて禁止するのでした。
第1幕:20歳(16歳)の誕生日
オーロラ姫は無事に成長し、美しい女性に育ちました。
20歳(16歳)の誕生日を迎えられ、国王と王妃は心から喜びます。
お祝いの宴には、花婿候補の4人の王子たちが招かれました。
美しいオーロラ姫に心を奪われた王子たちは、それぞれ踊りながら求愛の証として1本のバラの花を渡していきます。
4人の王子たちに紛れ込み、老婆に変装したカラボスもオーロラ姫に花束を渡します。
オーロラ姫は花束の中に隠れていた紡錘(つむ)の針に気づかず指を切ってしまい、カラボスの呪いが現実になってしまう。
老婆に変装していたカラボスは本当の姿を見せ、勝ち誇りながらその場を去るのであった。
皆が悲しみに暮れる中、やってきたリラの精はこう告げました。
「オーロラ姫は死ぬのではなく100年の眠りにつきます。オーロラ姫が目覚める時に皆が一緒に目覚められるよう、あなたたちにも魔法をかけましょう。」
こう告げると、リラの精は城全体に魔法をかけるのでした。
※初演時はオーロラ姫は20歳の設定でしたが、改訂版では16歳になりました。
第2幕1場:オーロラ姫の幻影
オーロラ姫が眠りについてから100年後。
隣国のデジレ王子はお供の貴族たちと共に森へ狩りへやってきました。
狩りを楽しんだ一行は帰り支度をはじめますが、なぜかデジレ王子はなぜか気が進まず、ひとりで森に残ります。
するとそこにデジレ王子の前にリラの精が姿を表します。
リラの精はオーロラ姫の幻影を見せ、デジレ王子は彼女の美しさに心を奪われるのでした。
オーロラ姫が城の中で眠っていることを知ったデジレ王子は、リラの精と共に彼女が眠る城まで向かうのでした。
第2幕2場:100年の眠りからの目覚め
オーロラ姫の眠る城は植物におおわれ、カラボスとその手下たちに見張られていました。
デジレ王子はカラボスとその手下たちを追い払い、ついにオーロラ姫を見つけだします。
そして王子の口ぐけにより、オーロラ姫たちは長い眠りから目を覚ますのでした。
オーロラ姫のほほえむ姿に、デジレ王子は結婚を申し込むのであった。
第3幕:デジレ王子との結婚式
オーロラ姫とデジレ王子の結婚式。
結婚式には宝石の精の他にも、童話の中の主人公たちがたくさんの人が招かれた。
- フロリナ王女と青い鳥
- 長靴をはいた猫と白い猫
- 赤ずきんと狼
- 親指小僧とその兄弟達と人食い鬼
- シンデレラ姫とフォーチュン王子
それぞれが2人の結婚をお祝いする踊りを披露する中、オーロラ姫とデジレ王子は結ばれるのであった。
バレエ「眠れる森の美女」の特徴
バレエ「眠れる森の美女」の特徴を3つ紹介します。
- 上演時間が4時間を超える超大作
- 個性豊かな登場人物
- フロリナ王女のアフターストーリーがある
上演時間が4時間を超える超大作
バレエ「眠れる森の美女」は全3幕4場の超大作です。
なんと初演時の上演時間は、休憩時間も含めると4時間を超えました。
現在、「眠れる森の美女」を上演しているバレエ団は、ほとんどが改訂した短縮版です。
例えば国内のバレエ団の上演時間を調べてみると、以下のようでした。
- 新国立劇場バレエ団:約3時間15分(休憩含む)
- 東京シティ・バレエ団:約3時間(休憩含む)
映画2本分の長さと考えれば、短縮版でも十分な長さですね。
ですが「バレエを観たぞ!」と満足感を得られるようなボリュームたっぷりの作品です。
個性豊かな登場人物
「眠れる森の美女」には、たくさんの個性豊かな登場人物たちが出てきます。
そのため、それぞれのバリエーションや踊りの数も豊富です。
例えば第1幕では妖精たちのVa、第3幕では赤ずきんと狼など童話の中から登場した人物たちが踊りを披露しています。
登場人物が多く出演している分、それぞれの踊りを楽しむことができます。
フロリナ王女のアフターストーリーがある
実はバレエ「眠れる森の美女」の作品に登場するフロリナ王女が主人公の作品「青い鳥とフロリナ王女」(原題:Голубая Птица и Принцесса Флорина)があります。
初演は2014年にロシア国立ペルミ・オペラ・バレエ劇場で行われました。
振付は同劇場の芸術監督であったアレクセイ・ミロシュニチェンが行いました。
映画「マチルダ禁断の恋」でバレエ場面の振付をしていた人物です!
ストーリーをざっくり説明すると、フロリナ王女とシャルマン王子の幸せそうな姿に嫉妬した女王が、王子を青い鳥に変身させてしまうお話です。
バレエ「眠れる森の美女」の動画・DVD・CD
バレエ「眠れる森の美女」の練習に参考になる動画や音楽をまとめて紹介します。
動画:マリインスキー・バレエ団「眠れる森の美女」(1976年)
1976年にマリインスキー劇場での行われた「眠れる森の美女」の公演映像です。
- オーロラ姫:スヴェトラーナ・ザハーロワ
- デジレ王子:ユリ・ソロヴィヨフ
- リラの精:ガリーナ・メゼンツェヴァ
日本の公演ではあまり上演されない親指小僧とその兄弟達と人食い鬼の踊りも収録されています!
DVD:英国ロイヤル・バレエ団「眠れる森の美女」(2007年)
2007年に収録された英国ロイヤル・バレエ団の「眠れる森の美女」です。
- オーロラ姫:マリアネラ・ヌニェス
- デジレ王子:ヴァディム・ムンタギロフ
- リラの精:クレア・カルヴァート
DVD:ボリショイ・バレエ団「眠れる森の美女」(2011年)
ボリショイ・バレエ団による「眠れる森の美女」のDVDです。
- オーロラ姫:スヴェトラーナ・ザハーロワ
- デジレ王子:デヴィット・ホールバーグ
- リラの精:マリヤ・アラシュ
ボリショイ劇場の改装後、こけら落とし公演として上演された「眠れる森の美女」の映像です。
カラボス役をアレクセイ・ロパレヴィチ(男性)が演じています。
CD:バレエ「眠れる森の美女」全幕
「眠れる森の美女」の全幕が収録されたCDはいくつか販売されていますが、購入には注意が必要です!
CDによっては、テンポが速すぎるなどの理由から踊りに向かい音源がある場合があるからです。
練習用としてCDを購入する場合は、レビューなどを参考に選んでみてください。
試聴ができるお店で購入するのもアリです!
まとめ
今回は、バレエ「眠れる森の美女」のあらすじ・登場人物・特徴について紹介しました。
作品について深く理解することができて、新しい発見があった方もいるのではないでしょうか?
バレエ「眠れる森の美女」はチャイコフスキーが作曲し、プティパが振付した「白鳥の湖」「くるみ割り人形」と並ぶ最高傑作のひとつです。
この記事で紹介した内容が、「眠れる森の美女」の作品を練習する手助けになると嬉しいです!
バレエ作品について「もっと知りたい!」という方にはこちらの本がオススメです!
この記事を書いた人Wrote this article
かたーる 男性
『バレエの世界をもっと身近に!』をテーマに情報発信しています。【経歴】高校→バレエ留学→コロナ強制帰国→オーディション旅→海外バレエ団(4年目)。年間100公演以上あるバレエ団でソリストをしています。